はじめまして。空族の相澤虎之助と申します。
FutureHouseLab.の活動と私が所属する映像制作集団「空族」(くぞく)の活動は長年にわたってタッグを組んでいます。何故なら私が未来テレビに所属し笠原敬太さんや富岡克朗さんと昔からの友だちでもあり、お互いに「行動しながら考えて、足りないものは自分たちでつくる」というDIY精神を共にしているからであります。
さて、先日私は空族の一員として映画『バンコクナイツ』を製作したのでありますが、映画のタイトルが示すようにこの作品はタイ、その上に位置するラオスを縦断するオールロケの作品となりました。この映画を製作することで私たちは必然的にタイ、ラオスを旅することにもなり東南アジアの文化を多く学ぶことになりました。その過程の中で現地の人々のちょっと面白い生活の知恵、DIY精神などをふまえてレポートしてみたいと思います。
ここ数年、日本のニュースなどでもご存知の方もいらっしゃるとは思いますがタイは政情不安が続いている状態で、2014年には軍事クーデターによって現政権が誕生し今に至っております。バンコクでは対立する政党がお互いに大規模なデモを起こし散発的にテロも行われて国際的なニュースにも報道されている状況で、その後軍部が政情の混乱を押さえるためにクーデターというカタチで介入し軍事政権が誕生し、そのまま現政権になったというわけです。私が映画の準備のロケハンをしていたのがちょうどそんな時期にあたり、バンコクでは連日デモ隊が道路を封鎖して大きな集会を開いているといった状況でした。
道路を封鎖するデモ隊の若者(気さくな感じで明るい)
ただ、タイの政治云々は私には非常に難解であり一筋縄では考えが及ばないのではありますが、現地でデモやデモ隊の人たちと交流して感じたのは、私たちが日本で想像するデモなどに比べるとだいぶイメージが違うということです。デモは東京で言えば銀座の大通りや渋谷のスクランブル交差点を真っ昼間から封鎖して行われた大規模なものでしたが、その中で集まった参加者や群衆が、出演するバンドに喝采しまるでお祭りのように露天を出店してグッズやご飯を売ったりする一大イベントのような様相だったのです。基本的にはみな笑顔でまるで何も知らなければこれは何かのフェスティバルかと勘違いしてしまうような有様でした。路上でTシャツを売っている若者たちに聞いてみたところ「デモに合わせて自分たちで手造りのTシャツをつくったんだよ、これは売れると思ってさ」という逞しい言葉を聞きました。
デモ用のホイッスルやリボンなどを露天で売っている。近県から来たらしい。
バンコクにおいて一時期は戒厳令がしかれ、一体どうなることやらと心配したものですがバンコクナイツに出演した女の子たちに聞いてみても「王宮周辺じゃなければ大丈夫」とのことでそれよりも夜の店にお客さんが来なくなることを心配していました。暫くすると何事も無かったようにナイトマーケットに行っても多くの人たちが買い物を楽しんでいて多くの露天が商売をしています。その中でもビックリしたのはなんと露天の刺青屋、いわゆるタトゥーショップでした。しかもマシンを使わず針を使った手彫りを地面に敷いたシートと簡単な看板ひとつで行っているのです。衛生面などこちらの感覚では心配になってしまうのでありますが、見方を変えればセンスと腕一本でタトゥーショップの露天まで出してしまうタイの人々のタフなDIY精神には見習う部分も多くあるのではないでしょうか?
映画『バンコクナイツ』を撮るにあたってタイの田舎にもロケハンに行った際に、そこには私たちが忘れがちな生活と自然がダイレクトにチョッケツしている姿がしっかりとあることを再確認させられます。かつての日本と同様に東南アジアでは醤油にあたる魚醤を取れた川魚から家で造っている光景、川のほとりで煙草の葉を乾かしている光景などがごく普通の家々で見受けられます。ガソリンスタンドなどが無い村々では雑貨屋の軒先にウイスキーの1リットル瓶に入れられたガソリンが売られていたり手近なモノやコトを生活の糧にしているのです。
家の軒先で魚醤をつくっている。
川のほとりで干されていた煙草の葉。
ガソリンを入れてくれる雑貨店のおじさん。ウイスキーの瓶である。
これらの光景は特にタイでは珍しいコトではない普通のことなのですが、私たちの“普通”の生活の中にDIY精神を常に忘れてはいけないことをタイの人たちから教わったことも、映画製作という過程の中で大きな力となっていったのです。
映画『バンコクナイツ』(予告編)
2017年テアトル新宿にて公開、随時全国公開中
映像制作集団「空族」のホームページ
http://www.kuzoku.com